チェルトナム・フォーク・フェスティヴァルに行ったこと


2000年二月、休暇で英国コッツウォルズ地方に滞在していた私は、チェルトナムの街でフォーク・フェスがあることを知り、二日半の日程のうち一日だけのぞいてみたのだった。
真冬とあって場所は屋内、日本でいう市民会館といったところ。フェスというと街中が盛り上がり、綿菓子やタコ焼きの屋台が並んで華やいだ雰囲気を想像するが、そんなことは全く無く、コッツウォルズといえばモリス・ダンスが有名なだけあって中心街をモリス隊が練り歩く企画などもあったようだがそれも短い時間で、情宣もあまり見かけず、お好み焼きの屋台すら出てない全体的に非常に地味な雰囲気の中私は会場のチェルトナム・タウンホールに足を運んだ。
コンサートホール(といっても小ホールといったところ)で観たライヴは以下の如し。

Pauline Cato & Tom McConville
フィドルとノーサンブリアン・パイプのデュオ。パイパーのおばさんの妙技もさることながら、フィドルがそんなにトラッドトラッドした感じじゃなくて非常に情緒的なフレーズを奏でつつパイプに絡むキレイかつ躍動感あふるるアンサンブル。とてもよかった。
Martyn Wyndham-Reed
豪州出身オヤジの弾き語り。無伴奏でおんなじメロを十なん番までよう判らん発音の英語で歌われたりするとちょっとマントラ気分になり、寝た。 翌日はバンドとやったらしい。

Graham & Eileen Pratt
これまたきれいな声の女性シンガーとマルチプレイヤーのデュオ。伴奏はギターやコンサーティナやシンセなど曲によって激しく持ち替える。結構コンテンポラリーなアレンジが施されていて、ドーナル・ラニー系の歌モノを想い起こさせるときも。しまいにはジャズのスタンダードもやったのだった。この人たちもよかった。
John Kirkpatrick
言わずと知れたアコーディオンの大御所。曲によってボタン、ダイアトニック、コンサーティナとホイホイ持ち替えながら軽やかに弾きつつ、アノ純英国声で朗々と歌われたらもうアナタ、たまりませんわ。あまりに軽妙に弾くので見てると自分もジャバラやったら楽しいんじゃないか、始めよっかな、などと思ってしまうが、それは名人の芸だからこそ軽く楽しくに見えるんだと、ほどなく悟った。昼と夜の2セット出てて両方観たが、出し物はほとんど別であった。イヤー有難かった。寿命が延びます。

Norma Waterson & Martin Carthy
英国トラッド最強夫婦をナマで!イングランド関係はそんなに深く聴いてないがカークパトリックとこの二人がどんなに有難いかぐらいはわかるのでもうステージに上がってきたときからドコドキしてしまった。ノーマさんは三重顎になってますます威風堂々とした立ち姿からしてすでに有難く、歌いだすとその声のパワーとコブシに圧倒され、もう有難いというほかない。一方マーティンさんはニコニコ楽しそうであり、近所の酒屋のオヤジで恐妻家、といった風情であったがそんなことをいってはいけない。曲はバラッドが多く、幽玄で枯れた雰囲気で圧倒し、ノーマさんの凄味が一段と際立つセットであったといえよう。途中からアコーディオンがゲストで入り、「おお、こいつが娘のイライザの婿さんか?」と思ったがどうやら違った。なんか、トラッドのCD50枚ぐらい聴き込んだのと同じぐらいの御利益があるような気分になるライヴであった。(マニ車か?)
翌日にはカーシーとカークパトリックが対決!そう、ブラス・モンキーのライヴがあったのだが残念ながら私はどうしてもその日ロンドンに行かねばならず、観ることは出来なかった。うーむ。
コンサートホールのほかにも大ホールでは地元のケイリーバンドの演奏によるダンス大会、また他の部屋では出演アーティストを講師に招いての各楽器のワークショップなどが行われ、楽器屋、CD屋(ルナサの新譜ばっか流してたなー)の出店などもあり、会場は小さいながらフェスの熱気はふつふつと静かに沸き立っているのであった。

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