Hoelderlins Traum / Hoelderlin



 もはや何が出てきてもちょっとやそっとじゃ驚かなくなったYoutubeですが、これを見つけたときには思わず鼻からビールを吹きました。

 ドイツロマン派詩人の名を冠したこのバンドの1stアルバム、フォークを基調にしつつもちょっとプログレな構成やアレンジ。何より全体に漂う、「ゲルマン的心象風景」としか言いようのない物哀しげな雰囲気にわたしは10代から今に至るまで魅せられ続けています。
当時は吹けば飛ぶようなレーベルからのリリースだったし、こんなPVが当時作られていたとは思いもよりませんでした。(原曲は6分半あるのですが、インストパートはぷった切ってある。ナンテコトシヤガルンダ!)

儚げなヴォイスのVoはNanny von Grumbkowという人。これまでジャケ写のただ1枚の、顔がわかりにくいフォトだけで20年以上も憧れつづけてきたのですが、いきなり動くナニー!しかも美人だった! 長生きしてよかったと思う今日この頃です。
これまでいろんなジャンルのドイツ語の歌を聴いてきましたが、これほど曲とヴォイスが溶け合って美しく響く音楽をほかに知りません。まさに「声に出して読みたいドイツ語」です。唯一無比の夢幻世界。

ヘルダーリンはこのアルバムの後、ナニー含む中心メンバー3人は脱退、残りのメンバーがバンド名を引き継いで活動継続、音は「フツーのプログレ」ぽくなっていきます。以後は別バンドと考えたほうがいいでしょう。

1st時のリーダーだったChristian von Grumbkow(フルート吹いてる人)は脱退後画家に転向。奥さんのナニー(夫婦別性でde Ruig姓)とともに現在も創作活動中です。(作品はここで見ることが出来る)

後年日本盤CDも出たのですが、しょーもないライナーはついていても訳詞はついていませんでした。この曲の拙訳を載せとくので、この儚げな世界をより深く味わってください。

 「妖精のためのレクイエム」

かつて
考えることが禁じられている国があった
一人の小さな妖精だけが このお触れに従わなかった
ために 脅され 迫害され 
思考の罪により 死刑を科せられた

王が南西の国から呼んだ 3人の追っ手に
妖精は捕らえられ 牢屋に入れられた
追っ手たちは 妖精を縛り上げ 打ちのめし
眼を見えなくした
そしてさんざん毒づきながら捜したにもかかわらず 
思考を見つけることは出来なかった

王は言った 「思考するもの 死すべし
かような悪疫は 根絶やしにすべし
而して汝にも死を与わん」

追っ手たちは妖精を連れ去り
川の流れに投げ込んだ
妖精は自分の思考を取り出し 川のうねりに託した
海がそれを受け取った

今に至るまで その思考は見つかっていない
今でも…

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