7 mars 2015

Agrie gadi + Rami rami (2CD) / Iļģi

 このラトヴィアのバンドを知ったのはもっと最近の、いわゆるラディカル・トラッドの流れに乗った作品だったのですが、個人的にはのちに聴いたこの初期録音集のほうが風土や土地の匂いが感じられて好きです。 

 Iļģiの結成はソ連時代の1981年。現在に至るまでリーダーを務める女性フィドラーIlga Reizniece が結成、 ラトヴィア国内の隅々まで出向き演奏するとともに地方の伝統音楽を蒐集し、伝統衣装や楽器までも自作していた由。しかしそのような活動は民族意識の高揚につながるとしてモスクワの共産党から目を付けられ、大きな制約があったそうな。

2枚組のDisc1「Agrie gadi」は「Early years」の意。ソ連時代の1986年から93年までの、当局の監視の目を縫って録りためたスタジオ録音19曲を集めたもの。コクレ(=カンテレ)、フィドル、笛などの伝統楽器アンサンブル、女声中心のシンギングが織りなす伝統歌はシンプルかつアルカイックな美しさに満ちており、全体を覆うどんよりした仄暗さは現代にもアンビエントミュージックとして通用しそうです。当時共産党当局から強制された「陽気で明るいフォークダンス」のイメージを頑なに拒んだ上で作られた音はラトヴィアの風土や風景、そして歴史を感じさせる深みを感じさせます。



 Disc2「Rami rami」はソ連崩壊後音楽活動に制約もなくなった1993年録音、活動10年以上にして初のアルバムリリースでした。当時カセットテープのみでリリースされた音源の初CD化。Disc1に比べればアレンジメントが少し凝ってきた感じはあれ、霧に薄明が射しこむような美しさと伝統楽器による延々続くシークエンスは変わりません。



 その後バンドの音楽性は電気楽器を導入し、対岸フィンランドのHedningarna あたりの影響も感じられる作風となり現在に至りますが、この2枚組の飾り気のない美しさはラトヴィアントラッドの最初にして最高峰と呼びたいものがあります。
 中ジャケにはどこかの村の教会か公民館と思しき会場で伝統衣装を纏って演奏する初期メンバーの姿(写真下)がありますが、客席をぎっしり埋めた地元民、とりわけいちばん前で一心に聴き入るこどもたちの表情が印象的。セールスからも政治からも遠く離れて民族とその音楽がひとつになる場の情景です。

バンドの詳しい歴史はここで読んだものです。




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