20 janvier 2016

美好時刻 (A beautiful moment) /以莉高露 (Ilid Kaolo)

 台湾南東部・台東県出身の原住民(アミ族)SSW、デビュー作で新人賞もとったのち東部の花蓮県の農家に嫁ぎ、出産も経て農業の傍ら地道に活動、クラウドファンディングで制作した2ndアルバムです。

 弾き語りを基本としたフォーキーな1stに比べ、本作ではピアノ、弦カルテットなど多種の楽器を入れたアレンジの曲が目立つのが特徴。とくにピアノがいい仕事をしておりジャズ的フレイバーをも添えておりよい。アミ語の歌が減り大半は華語の歌詞になった点は物足りない感じもあるけれど、1stが台東県の亜熱帯の風を感じさせる作風とすると今作は台湾全土で遍く感じられる緩やかな詩情を含んだ音に深化したと言えるかも。

 リリース直後にネットでmp3を買って聴いていたのですがやはりアルバム現物が欲しくて12月に台湾に行った際に買ってきました。うつくしい装丁のブックレットを開いて驚いたのが1曲目「優雅的女士」という曲に日本語訳がついていたことです。さらには「この歌を高菊花さんに捧げます」と日本語でのクレジットが。(ちなみにこの曲には日本のブルースギタリスト菊田俊介氏が参加)
 高菊花という人について調べてみると、日本語世代の台湾人へのインタビューからなるドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」(酒井充子監督)に出演した原住民女性(日本名・矢多喜久子)だと知りました。父親は日本統治下で原住民ではただ一人台南師範学校を卒業して教師となり、終戦後は村長を勤めていたが原住民の自治を主張したため中華民国当局により弾圧、逮捕処刑されたとのこと。映画では父の思い出を語る菊花さんが淡々と描かれ(観てないけど)、多くの台湾人も感動を受けたといいます。

暴風雨が森を呑みこみ/小さな花は打たれて開かなくなってしまった/人々は鎮魂曲を口ずさむ/お願いだから忘れないでと彼女は言う/これは運命の旋律/自由に飛び回る
思い出はだんだんぼんやりして/記憶が沈黙してしまうのがこわい/人々はあまり多くを話したがらない/傷ついた魂がやってきて/ピアノの鍵盤をぽろぽろと鳴らす/未完成の歌をそこに残して
優雅な女の人が手を振る/この悪夢のような過去/彼女は一度も屈したことがない
(対訳より)



ちなみにこの人の名前は正しくは「イーリー・ガオルー」と読むと日本語クレジットで知りました。

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