Elsa Martin & Stefano Battaglia

 ECM筋で活躍するステファーノ・バッターリア(pf)と女性シンガーのデュオ作。
ラヴェルやサティみたいなフランス近代歌曲のような、ジャズのような、ときには伝統音楽のようにアルカイックな、でも絶対にいずれでもない不思議な美しさをたたえたピアノとヴォーカル。
歌詞はイタリア語の方言?と思いきや、オーストリアとスロヴェニアに接する山間部で話されるフリウリ語(レトロマンシュ語の仲間)とのこと。そのフリウリ語の詩人たちの作品から採られた詞がここで歌われている。(その中にはPP. パゾリーニも。調べてみたらパゾリーニ、若い頃フリウリ地方で教師をしながらフリウリ語の詩集を出していたそうな)

ジャケ写のような深々と雪が降り積む夜を想起させる響きにうとうとしていると突然譫言のようなセリフを叫びだし狂気に目が覚めたりして、難解なヨーロッパ映画を見ているような気分も。耽美と狂気がせめぎあい時空が逆走する、これはいかにもイタリア的映像、ほらアレですよ、「演劇的」とか「アヴァンギャルド」とか、つまりは...プログレッシヴ。

イタリアというとなにかと地中海に繋がる音に惹かれることが多いですが、これは北のほうの、山と谷と森の音(バッターリアもミラノの人)。
こういった「風土に形づくられた音楽」が聴きたくてヨーロッパのシーンを掘ってるわけですよ。


同じデュオで今年2020年さらに同路線での新譜が。
本作の歌詞もフリウリ語の詩人、ピエルルイジ・カペッロの作品(伊語とフリウリ語)から採られている。
これも長い曲は途中から狂い始めるので要注意。



MVも出来ていた。やはりヨーロッパ映画ぽい、アブストラクティヴな美に満ちた世界ですね。

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